日本語のニュース番組を見たいな、と日々思っています。
えぇ、そんなのないのって?いやいや、ローカルに万が一あるかもしれないが、在京キー局がやっているいわゆるニュース番組ははっきり言ってバラエティ番組以下です。どこのバラエティ番組だって?「そこまで言って委員会 NP」は素晴らしい番組ですよ。
在京キー局の「ニュース番組」に許せない問題点があまりにも多く、いちいち指摘するのはやめます。代わりに、じゃどうすればいいのか、自分なりに理想的な姿を提示してみたいです。
理想とはいえ、自分勝手な好き嫌いの空想論で行こうとは思ってなくて、ニュース番組の本質から理想(真)のニュース番組の条件を考えていきたいです。
ニュース番組は、そもそも何の目的に存在しますか。
端的に言えば、限られている時間の内、あるスコープの全貌を近似的リアルタイムにキャッチアップできるように視聴者に伝えるのが目的だと考えています。
「限られている時間の内」は自明な条件とも言えるでしょう。視聴者は暇人ではありません。長時間視聴は現実的に不可能です。一方、いくら長時間視聴してもらっても、世の中の出来事を満遍なく伝えるのは無理です。どうしても時間の制約は伴うものです。
「あるスコープ」とは、やはりニュースって範囲を考えなければなりません。地球人である以上、一部の愛好家や専門家はともかく、地球以外の出来事は基本重要ではありません。「重要ではない」というのは、「地球以外の出来事を把握する」コストと収益が一般視聴者にとってアンバランスだということです。隕石飛来とか、地球外生命発見などはもちろん知る価値あるが、「基本」重要ではありません。こう考えると、何らかのスコープを決める必要はあります。もちろん何でもいいですが、一般的であればあるほど、ゴールデンタイムもしくは 24 時間放送など、多くの人にとって見やすい方式で放送する必要はあります。例えば、東京在住の人の視点からすると、「東京」+「日本」+「世界」の 3 つのスコープは最も一般的でゴールデンタイムもしくは 24 時間の放送体制は必要だと思います。
「全貌」も自明と言えるでしょう。それは「公平」とか「中立」とか定義も曖昧だし、到底実現不可能なものではなく、「母集団のありのままに近い様子」を視聴者に認識してもらうだけです。もちろん、「公平」でも「中立」でも「全貌」でもどれも不可能だが、「公平」と「中立」はそもそも存在しません。人それぞれの「公平」「中立」ならあるが、それはただその人の勝手で、何の意味も持ちません。要するに、存在しない「公平」「中立」を主張するのは、自分の思うままにやれと何の変わりもありません。一方、「人が思っている全貌」に意味あります。もちろんそれも人の勝手だが、存在しないものを目指すより、より建設的だと考えています。
では、理想的なニュース番組の条件は何でしょうか。
「これはよりスコープの全貌を把握できるものなのか?」を問いつつ、放送内容の優先順位を決めます。「全貌」は先述べたように、「人の勝手」が入っているが、いくつかの視点を提示したいです。
- 時間的全貌:世の中の出来事、必ずバックグラウドがあります。先週もう伝えたかもしれないが、見ていなかった人もいるので、なぜそうなったのか、を伝えなければなりません。
- 空間的全貌:何かを伝えると、「うわ、まさか?!」「えぇ、やばい!」という感情を喚起することができます。それはなぜかというと、それしかないみたいな伝え方をしていて、座標軸上の位置付けを視聴者ができなくなるからです。座標軸のどこにあるのか、忘れられたかもしれない既知のことと比較できるように、一見無関係な他の出来事も比較検討できるように伝える必要はあります。
- 無機と有機の全貌:世の中の出来事は事実です。しかし、世の中の意見も実は事実です。もっと正しい言い方をすれば、意見が存在することが事実です。意見を無視し、出来事だけ伝えるのはとても全貌とは言えません。そして、存在している意見を伝える以上、全面的な意見の構図を伝えなければなりません。何らかの意見にも、反対意見が必ずあります。その場合、全ての反対意見を伝えきれないかもしれないが、他の考え方もあるとの前置きで、最も有力な反対意見を最低限 1 つちゃんと提示しなければなりません。自分の勝手で提示するより、電話などを繋げて、意見がぶつかる最精鋭の論客を招いてリアルタイムにバトルさせるのは一番いいでしょう。バトルとはいえ、事実と異なる発言があれば、キャスターは介入すべきです。
こういうように、全貌を伝えるのは不可能だが、「こういう視点を取り入れればより全貌に近いよね」の議論はできるのです。
今の日本のニュースはどうでしょう。
Case 1

- 重要事実の無視
日本政府は、中国での新型コロナの感染状況を受けて、先月 30 日から臨時の水際措置を始め、8 日からは、中国本土からの直行便で入国する人に出国前 72 時間以内の陰性証明の提出を求めるなど対策を強化しています。
これに加えて政府は、今月 12 日からは中国本土だけでなく、マカオからの直行便で入国する人に対しても出国前 72 時間以内に受けた検査の陰性証明の提出を求めるとともに、入国時に PCR 検査などを実施することになっています。
と書いてあるが、一番影響の大きい「入国時に PCR 検査陽性の場合強制隔離となる」措置はどこにも書いてありません。さらに、民間航空会社の事業計画に手を出して増便させない事実も無視されています。これだけ読むと、「なんだ、検査するだけじゃん」と思われ、日本側の措置の影響を過小評価させるかもしれません。
- 主張を伝えきれていない
ビザの発給を一時的に停止する理由については明らかにしていませんが中国外務省の汪文斌報道官は 10 日の記者会見で「少数の国は、科学的な事実や自国の感染状況を考慮せず、中国に対して差別的な入国制限をとっており、われわれは断固として反対し、対等な措置をとる」と強調していて、日本政府による水際措置の強化への対抗措置とみられます。
中国側の記者会見上の発言はこうだが、ここでいう「科学的な事実や自国の感染状況を考慮せず、中国に対して差別的な入国制限をとっており」とは一体何を指しているのでしょうか。一方の主張を紹介するなら、不完全でバカに見えるものではなく、弁護士になったつもりで最も強力な形で紹介すべきです。
- 事実と異なる発言を放置
外務省は「水際措置を強化しても国際的な人の移動に影響が出ないよう日本が配慮しているにもかかわらず、中国の対応はそうしたことへの対抗措置とみられ極めて遺憾だ」と話しています。
外務省の主張していることが分かります。しかし、「影響が出ない」のは本当でしょうか。軽微な影響ならともかく、実際に大きな影響が出ています。そのような人たちが受けている客観的な影響を紹介すべきです。
- 空間的全貌の無視
また、中国に工場がある日本の自動車メーカーの間でも、中国で感染拡大が続いていることから現地への出張はすでに減らしている企業が多く、今回の措置による影響は限定的だとしています。
影響を受けている自動車メーカーや商社などビジネス界の声を紹介したが、国際旅行はビジネス専用のものではありません。他の声を無視する筋合いがありません。
- 主張と主張のバトルをさせない
東京にある中国大使館が中国を訪れる日本人へのビザの発給を一時的に停止したと発表したことについて、日本政府関係者の 1 人は「ある程度は想定していたが、日本側は水際措置で入国を禁止したわけではないので、今回の対応は少しやりすぎではないか」と述べました。
「少しやりすぎではないか」と書いてあるが、まず「どうしてやりすぎか」は伝えていないのはすでに大きな問題だが、「やりすぎではない」と主張する中国側にも反論するチャンスを与えるべきです。そうしないと、「はい論破」と印象付けてしまう可能性は非常に高いです。印象付けではなく、視聴者に自分で判断させるべきです。
Case 2

- 主張と主張のバトルをさせない
都内の新型コロナウイルスの感染者数について、猪口正孝副会長は「(昨年夏の)『第 7 波』を超えている可能性もある」と指摘。医療提供体制は「相当逼迫している」と危機感を示した。
東京都医師会長の主張は分かるが、その反論はどこにも書いてありません。反論があるにも関わらずそれを無視するのは、主張を支持するとほぼ同然です。